SSブログ

【市川崑追悼】★★★☆☆ - DVD『獄門島』 [ ┣ TV・映画・DVDレビュー]

2008年2月13日に他界された、市川崑監督の追悼企画です。

今回は、
『獄門島』
のレビューです。

『犬神家の一族(1976年)』『悪魔の手毬唄』に続く、市川崑&石坂金田一シリーズの3作目にあたります。
原作の横溝正史氏に許可を得て犯人を変更(?)した異色作で、
前2作と同様に入り組んだ話になっており、推理色が濃い良作です。
レビュー結果は★★★☆☆としました。

※途中からネタバレしますが、まだ続きを読んでも大丈夫です。

獄門島

獄門島

  • 出版社/メーカー: 東宝ビデオ
  • 発売日: 2004/05/28
  • メディア: DVD


以下はあらすじです ↓ 。原作とは微妙に異なります。

昭和二十一年、岡山県笠岡市。
金田一耕助は、復員した友人の天宮(あまみや)の依頼で、天宮の戦友で復員船で病死した鬼頭千万太(きとう・ちまた)の絶筆を、獄門島千光寺の和尚・了然(りょうねん)に預ける。

※映画シリーズでは金田一は戦争に行っていません。

獄門島に渡り、本鬼頭家にご挨拶する金田一耕助。
本鬼頭家には、月夜・雪枝・花子という3姉妹と、先代の嘉右衛門が亡くなってから本鬼頭を切り盛りしている分家の娘・早苗がいた。

島では、親類筋の分鬼頭が本鬼頭を乗っ取ろうとしているという。
分鬼頭の後添えの巴が、鵜飼章三という男を使い、3姉妹の誰かに取り入ろうとしているのだ。

その夜、千万太の通夜の席で、花子の姿が見えなくなる。
胸騒ぎを覚える金田一は、天宮が復員船の中で千万太から聞いた、恐ろしい内容を早苗に告げる。

『俺は死にたくない…。
 俺が帰ってやらないと、3人の妹たちが殺される…。』

花子は、いつまでたっても帰ってこない。
金田一・了然・村長・漢方医幸庵・早苗・勝野らが捜しに出かけるが、金田一と了然が千光寺の境内で目にした光景は……。


この作品は、完全に推理と娯楽を主軸に置いた作品です。

『悪魔の手毬唄』同様、犯行の軸となるカギがあります。
それがなんなのか書くとネタバレに限りなく近くなるので、その先はネタバレで書いておきます。

調べたところによると、原作では早苗に対して金田一がモーションをかける(生涯ただ一人愛した)女性のようですが、本作品ではこの部分にも変更が加えられています。
金田一耕助を神格化して捉えていた市川崑監督らしいアレンジと言えると思います。

早苗役の大原麗子さんはもちろん、このシリーズ常連と言える加藤武さん・大滝秀治さん・小林昭二さん・三木のり平さん・草笛光子さん・司葉子さん・坂口良子さんらが、絶品の演技を観せてくれます。

また、本作に限って出演されている、嘉右衛門役の東野英二郎さん、了然役の佐分利信さん、巴役の太地喜和子さん、清水巡査役の上條恒彦さんの演技も絶品です。

ちなみに、月夜役の浅野ゆう子さんは、このときすでにビッグネームでした。子役で荻野目慶子さんが見れたり、了沢役で後にガンダムのシャアの声をやることになる若き頃の池田秀一さんが見れるなど、そういう視点からも楽しめる作品です。

ただ、気軽に楽しめますが、傑作とまでは思いませんでした。

↓注意!
↓以下ネタバレです。
↓これから観る人は、
↓読むのをやめてね。








↓犯人書いてあるよ。
↓気をつけてね。









以下ネタバレです。

了然和尚はなんのためにやったのか。

千万太は死に、一(ひとし)も死に、3姉妹も死んだ。

形的には、早苗が本鬼頭を継ぐのでしょう。

そう考えれば、結果的にはよかったのかもしれない。

けれど、嘉右衛門さんの遺志には応えられなかった。

了然の胸の中は、虚しさで染まっていたでしょう。

勝野は、あれでよかったのか。

勝野の動機は、了然をかばうことだった。

早苗と親子の名乗りができて、それで満足だったのか。

結局は、早苗が全部背負うことになってしまった。

早苗なら、分鬼頭を相手にしてもやっていけるでしょう。

それが、早苗によってよいことだったのか。

これは、早苗にしかわからない。

これからの早苗次第だと思います。

早苗は強い女性だ……。


★ふたつ分減らした理由を書いておきます。

ひとつは、犯行の統一感のなさ
いまいち統一感が感じられず、バタバタと殺人が続いているイメージがある。
勝野が雪枝を殺した後、和尚が偶然死体を見つけられなかったら、『むざんやな 冑の下の きりぎりす』の句に見立てた殺人は完成しなかった。
かと思うと、勝野が月夜を殺したときは、勝野がひとりで『一つ屋に 遊女も寝たり 萩と月』の句の見立てを完成させている。
了然と勝野が示し合わせている気配がないことから、これらは奇跡的に完成された連続殺人と言えます。

軸の推理となる話にご都合主義が使われてしまった。

もうひとつは、推理以外の要素が薄いこと
犯人をふたりにしてしまったためか、『犬神家の一族(1976年)』『悪魔の手毬唄』のような推理以外の要素が希薄になってしまった。
勝野と早苗のエピソードには、それなりの悲劇が準備されているんですが、前2作に匹敵するような胸が潰れる感覚はありません。

準備した話を膨らましきれなかったのは、本と演出の失敗です。

気楽に観るのには手頃な作品ですが、その域を出る傑作までは行っていないと思います。


早苗役の大原麗子さんに強いイメージがあるだけに、この後の本鬼頭は心配ないものと思います。
しかし、重荷を全部背負うことになったのは確か。

早苗が強い人なのが救いの作品です。


nice!(1)  コメント(2)  トラックバック(0) 

nice! 1

コメント 2

あまちゃん

この作品は、娘たちが殺されてもいいや。と思うよな人物だったのが問題ですね。

ただ、屏風かな。金田一の「達筆過ぎて読めないな。」
これは弟と盛り上がって、よく使いましたね。
自分の汚い字にですけど。
by あまちゃん (2008-02-17 23:49) 

みみちゃん

あまちゃん、nice&コメントありがとうございます。

おっしゃる通り!
被害者は消えるべくして消える娘たちでした;;;。

しかし、冷静に考えると、唯一犯人の計画通りの人物を殺害できた(最後に動機が瓦解するけど)珍しい作品なんですね。

どちらかというと、ドラマ性より映像と雰囲気を楽しむ作品のような気がします。
by みみちゃん (2008-02-18 00:12) 

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。